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2000.8

財産評価基本通達の改正

−ルールは常に同じではない−

●財産評価基本通達とは

税理士なのにこのコーナーで一度も税法に触れたことがないので、たまには税務に関するトピックな話題についてお話しましょう。

さて、この度財産評価基本通達が改正となりました。この財産評価基本通達とは、国税局の考える相続税法上の時価の算定方法の指針を示したもので法律ではありませんが、実務上この通達は、非常に強い影響力を持っています。

今回の改正点としては、土地や国外財産の評価方法、株式交換等商法改正への対応等が挙げられますが、中でも28年ぶりに類似業種比準価額の計算式の変更が実務上注目されることになるでしょう。

●非上場会社の株式の評価額

上場企業株式の時価は、市場価格を基に算定できますが、日本の会社の99%以上を占める非上場企業株式にはその市場価格がありません。そこで、この財産評価基本通達でその時価を算定しているのですが、当然のことながら非上場企業には、上場企業と同様な規模の会社もあれば、個人と同様な形態の会社も含まれるため、それらを一つの算式で評価することは出来ません。また、そのオーナーとしてその株式を保有しているのと少数株主として保有しているのであれば、当然その価値(時価)も大きく異なるはずです。

もう少し詳しく説明すると、非上場企業の株式は、まずその株式を取得する人の株式保有割合によって原則的評価方式と特例的評価方式に分けて算定します。特例的評価方式は、少数株主を対象とし、会社の経営への影響力も小さいのでその会社は支払っている配当に基づいて時価を算定する配当還元方式と言う方法で評価します。結果的には平均10%の配当で額面金額となるので、非常に低い評価額となる例が多いと言えます。

一方いわゆるオーナーが保有する株式は、原則的評価方式によって評価されるのですが、さらに、評価会社の従業員数、総資産額、取引金額の規模の区分により、大会社、中会社(大・中・小)、小会社に区分して評価します。その算定の際には、類似業種比準価額と純資産価額と言う二つの要素を組み合わせて評価しますが、前者は、業種の類似した上場企業と対比した場合のその会社の評価額のことであり、純資産価額とは、その会社の解散価値に基づいた価値のことです。そして、上場企業に近いものは類似業種比準価額を強く、個人企業に近いものほど純資産価額を順次強くするというこの二つの要素のウエイトの調整によって評価額を算出します。一般的には、類似業種比準価額の方が低く、特に含み益の大きい不動産等を所有している場合の純資産価額は大きくなりがちです。

そこで、類似業種比準価額と純資産価額の差を利用して、実際は土地・株式を個人で所有しているのと変わりないものを会社で保有することにより大幅な相続税評価額の軽減を図るのを防止するために、そのような土地や株式の固まりのような会社を特定評価会社として、特別の方法で算出しているのです。

●改正点及びその影響

今回は、
(1)この原則的評価方式の中・小会社の区分基準の見直し
(2)類似業種比準価額の計算式そのものの改正
(3)2要素以上0の会社の類似業種比準価額の適用の可否
の3点について改正されました。

(1)は、中会社のハードルを下げたため、従来は小会社と区分されていたものの一部が中会社と区分されることになります。これに連動してその会社の類似業種比準価額のウエイトが高くなります。

(2)は、配当、利益、簿価純資産の3要素を今まで同じ比率で採用していたのもを、利益の要素を3倍に引き上げ、さらに、今まで一律0.7であった斟酌率(上場企業の株価を1としたときの掛け目)を区分に応じて、大会社0.7中会社0.6小会社0.5と引き下げました。これにより利益水準の低い会社の類似業種比準価額が下がり、逆に高収益低配当の企業の類似業種比準価額が上昇すると思われます。

(3)は、今まで配当、利益、簿価純資産の3要素のうち2つ以上0の会社は、一切類似業種比準価額を適用できなかったのが、2つ0でも25%は類似業種比準価額を組み入れることが出来るようなりました。(ただし3要素0は従来通り)これにより、3期以上連続赤字で無配当でありながら含み益の大きな会社の評価額は下がるのものと思われます。

いずれにしましても、結果的には、一部の高収益企業を除いては、中小企業の自社株評価額が引き下げられ事業承継の負担が軽くなるものと思われます

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●税法も環境も変わる。作為的な対策は禁物

長々書きましたが実は私の申し上げたいのは、改正の内容ではありません。自分自身の反省も込めて本当に申し上げたいのは、このように税務を取り巻く法律及び通達は常に改正されると言うことです。それも国会の審議を経た法律ではなく、国税庁の見解である通達の改正により、大きく相続税評価額が変わるということです。

確かに、この自社株の評価額をとっても、作為的に評価区分や株主構成を変更することにより、評価額を引き下げることも可能かもしれません。しかしその後実際の相続が発生するまでに同じルールが適用される保証はどこにもないのです。

かえって、その対策のため円滑な事業承継を行う上で重大な支障を来す場合もあり得ます。例えば、配当還元方式を利用するための安易な従業員や親族へのばらまきをしたため、実際の事業承継者の経営権が不安定となり、最悪の場合、仲違いした親族から将来株主代表訴訟を起こされる場合すらあるのです。これでは完全に本末転倒といえるでしょう。

ですから、もし納税負担の軽減も含め事業承継を円滑に行いたいのであれば、地味なようでも評価額の高い自社株を毎年少しずつ贈与をする。毎年自社株評価額は変動するので、贈与税額を一定額とし、贈与株式数を変動させるといういわば「贈与税のドルコスト平均法」(注:これは私しか言ってません)もひとつの手かもしれません。

なお、その際には原則として自社株は、事業承継者のみに引き継がせます。配当のでない自社株なんて事業承継者にとっては重要でも、それ以外の人にはただのお荷物なんですから・・・

ちょっとこのスペースで非上場企業の株価の仕組みを説明するのは無理があった気がしてきました。ここまで読んだ人はほとんどいないでしょう。(^^)








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