2001.2
遺言作成のススメ
−生前の意思表示の大切さ−
|
| ●遺言とは |
「うちは資産家じゃないので、相続税も遺言も無関係。」ホントにそうでしょうか。確かに相続税法改正と地価下落で相続税を支払う人は亡くなった人100人に対して5人程度という状況です。しかし、私は資産家の方はもちろんそうでない方も遺言を作成する、あるいは生前から自分の財産の処分の仕方について、家族と話し合っておくことは非常に大切なことだと考えています。
|
| ●遺言の種類と法的効力 |
遺言により、相続分の指定、分割方法の指定、遺贈、遺言執行者の指定、認知、遺産分割の禁止等について法的に定めることが出来ます。これ以外のことを書くこともできますが「必ず兄弟仲良くしなさい」等のことは、遺言に記載しても法的には効力を生じません。
また、この遺言の方法には自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言があります。自筆証書遺言はその名の通り自分で書くため費用も掛からず、便利ですが紛失や偽造のおそれがあり、私はあまりおすすめしていません。秘密証書遺言は、遺言の存在は知られてもその内容は秘密にしておきたいと言う場合に便利ですがほとんど利用されていません。それに対し、公正証書遺言とは、二人以上の証人に立ち会ってもらい公証人に作成してもらいます。証人の口から内容が漏れる心配もありますが、公証人役場に原本が保存されるため紛失や偽造の心配もないので私は、こちらをおすすめしております。
この公証人とは、税理士や弁護士と同じ自営業者であるため公証人に対する報酬は一人一人異なります。ちなみに、「財産の1/2を○○にあげる」等の包括遺贈は非常に安く数千円程度で、「この財産は△△にあげる」等の特定遺贈はその財産額に応じて報酬が決まります。その財産が一億円で50,000円程度ではないでしょうか。
また、比較的高額な財産を保有している方には、税理士にご相談するか信託銀行の遺言信託を利用し、一定期間ごとに相続財産の把握と遺言の内容の見直しをすることをおすすめします。
|
| ●遺言のメリット |
遺言をわざわざ書くメリットは何でしょう。もちろん遺産分割を円満に行うためでしょうが、もう少し具体的にお話ししましょう。
遺言がある場合、相続人間で遺産分割協議がまとまらなくても、この遺言を優先して遺産分割を行うことが出来ます。では、遺産分割協議は不調で遺言もない場合どうなるでしょう。その場合は、法定相続分による仮の分割が行われたものとして相続税の申告を行わなければなりません。その際、未分割の財産には配偶者の税額軽減や小規模宅地等の評価減等の規定が利用できないため、場合によっては相続税額が大幅に増加することもあります。(一定期間内に遺産分割が整った場合には、その時点で減額更正の請求を行うことは可能)
それよりも、分割協議は整わず仲違いしている親族間で財産を未分割のままにしたり共有していくと言うことは財産の利用や処分にも大きく制約を受けることになるのです。遺産相続による係争は、金額よりも感情が先立ち、長期化する傾向が強いようです。私の知る限りでも、20年近い月日を費やし最高裁まで争われた例もあります。
また、本来相続権のない者に対して財産を渡すことも遺言によってのみ可能です。
|
| ●かえって遺言が仇に |
遺言を書くことをおすすめしてきましたが、遺言さえあればすべて解決というわけではありません。かえって遺言があったために遺産分割がうまくいかなかった例もあるのです。
実は、民法には相続人に遺留分と言うものが認められています。これは、例えば遺言で「全財産を愛人にあげる」と書かれてしまうと、遺族が生活に支障を来してしまうため、そのような事象に対処するため、相続人の最低保障の相続分が定められています。これが遺留分です。具体的には、全体の遺留分は、直系尊属のみの場合で財産の1/3、それ以外で財産の1/2となっており、結果的には各自の相続分にこの数字を掛けたものが一人一人の遺留分となります。ただし兄弟姉妹にはありません。
もしこの遺留分を侵害して遺贈が行われた場合には、遺贈自体は有効でもその侵害した遺留分について他の相続人から遺留分の減殺請求が出される可能性もあるのです。
私が見た事例の中でも、遺言で「末娘に全財産を与える」と書かれていたため、他の兄弟全員から遺留分の減殺請求を出され、結果的に感情のもつれも手伝って物納も出来ず、延納すら困難な高額の相続税のため、滞納になった相続税の支払いとその侵害した遺留分を精算するために財産を切り売りし続けていると言う不幸な例もありました。
では、遺言をする場合には一体何が大切なのでしょうか。それは、生前から本人が家族及び財産への思いを伝えることがなりより大事だと私は考えています。相続人の気持ちを無視した遺言はかえって相続人の仲違いを生じさせます。どうしてそのような遺言を書いたのか、あるいはどのように遺産分割をして欲しいかをきちんと説明しておくことがなりよりも大切なのではないでしょうか。
形式張って暖かみのない遺言書にも、家族への思いを手紙で添えておくことで円満な相続が図れることもあるのですから。
|