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2003.3

新型贈与で死にガネが生きガネに?

−相続時精算贈与という選択肢−

●新型贈与で資産移転の選択肢が増えた

今回の税制改正で、H15.1.1以降の相続税及び贈与税の税率が低くなるとともに、相続時精算課税制度(以下「新型贈与」)という新しい贈与の手法が認められることになりました。

詳しくはタックスアンサー等でご確認頂くとして、要するにこの制度は、多額の金融資産を死蔵させてしまっている高齢者から資金を有効活用する現役世代への財産移転を円滑に行わせることを目的としています。

具体的には、
 
(1) 贈与した財産を相続時に合算して課税する。
(2) 65歳以上の親から20歳以上の子への贈与については25,000千円に達するまでは贈与税は非課税で、超過した分については20%の贈与税。(財産の種類を問わない)
(3) 一定の住宅取得資金の贈与ではさらに10,000千円の贈与税の非課税枠の上積みあり。さらに 贈与者と受贈者の年齢要件はなし。(現預金のみ)

というものです。

この制度を使えば、いままで贈与税の負担を嫌って現役世代への財産移転を躊躇していた高齢者が積極的に贈与を行い、贈与を受けた現役世代の消費活動が活発になると言うものです。

ホントでしょうかね?結論から申し上げて、もちろん全く利用価値がないとはいいませんが、かなりまやかしの多い制度だと私は考えています。この制度で高齢者の財産移転が促進する程、物事は簡単ではないでしょう。もう私など高齢者が年を重ねるほど財産を手放したくなるのは、人間の本能なのではないかとすら感じることがあります。(^^)

●非課税枠の拡大ではなく、あくまでも仮払! 

今まで頂いた質問を整理すると、結構多くの方がこの制度の正確な意味を理解していないという気がします。ひょっとして「この制度を使ってガンガン贈与すれば相続税は安くなる」と思っています?それは、大きな間違いです。

まず、この制度を正しく理解する上で、最も大切なことは、この制度は「従来からの贈与税非課税枠の拡大」ではないと言うことです。

この「新型贈与」における非課税枠にしろ、非課税枠を超過した際に適用される贈与税率20%にしても、これらはあくまでも仮計算金額であり、相続時にあらためて精算がなされる、いわば個人の「源泉所得税」のようなものなのです。つまり、「新型贈与税」と相続税の関係は、個人所得における「源泉所得税」と確定申告による確定税額と同じ関係であるといえます。

ですから、「現行の贈与」であれば、毎年少額の贈与を繰り返すことによって、相続財産を圧縮し相続税額の軽減を図ることは可能なのに対し、この「新型贈与」を一度選択してしまうとそれ以後の贈与分については、すべて相続財産に合算されてしまうということです。

●富裕層の利用は要注意

この「新型贈与」を一旦選択すると以後その贈与者からの贈与について「現行の贈与」による贈与税の申告は一切出来ません。つまり、それ以後の贈与による相続税軽減策は出来ないということであり、この制度は直接的に「相続税軽減対策」にならないと言うことなのです。

ですから、この「相続税額」の見地からこの「新型贈与」を活用した方がいい人は、もともと相続税を支払うほどの財産のない方であり、相続税負担に頭を悩ませている富裕層はこの制度を選択するに当たっては、非常に慎重な検討が必要となるのです。

ちなみに、現行法における相続税の非課税枠は配偶者と子供二人の場合80,000千円となります。そうなると、相続財産80,000千円以下の方がいくら子供のためとはいえ、住宅取得資金として35,000千円もの現金を贈与するとはちょっと考えにくいですね。住宅ローン控除でも、財務省は総額で5,000千円以上の所得税が減税になると言っておきながら、実際には「そんな人何人いるの?」と聞きたくなる状態であるのに似ています。

さらに、こんなことを言ってはいけないかもしれませんが、住宅取得資金の贈与ついて、今までだって、いくら住宅取得資金贈与の実質的な非課税枠が5,500千円であるといっても、それ以上の住宅資金贈与は行われています。、そして、その差額は金銭消費貸借による貸金として処理されており、贈与税を支払っている人などほとんどいないのではないでしょうか。ですから、この制度が出来たって住宅取得資金の贈与が活発になるなんてねえ(^^)

●どうせ贈与するなら収益力のあるものか、値上がりするもの

もちろんこの制度が全く意味がないというわけではありません。従来よりも生前贈与の選択肢が増えたことは事実であり、有効活用する方法はあるでしょう。

この制度では、相続税を精算するに当たっても、「新型贈与」によって贈与した財産の評価額は、贈与時の価格で評価するため、贈与時よりも相続時の方が評価額の上がるものについてはこの制度の利用を検討する価値はあります。具体的には元本保証型のオフショアファンド等は長期保有すれば比較的値上がりの可能性が高いため効果的かもしれません。もちろん値下がりもありますので、そんなに確実に値上がりのするものなんてわからないですよね。(^^)

また、賃貸用不動産のうち建物のみをこの「新型贈与」で贈与することにより、以後の不動産所得を分散することにより所得税の軽減になるかもしれません。

さらに、節税ということではなく、ペイオフ対策や、遺言ではなく自分の目の黒いうちにきちんと遺産分割をし行く末を確認したいと言う方にもよいでしょう。ただイヤな言い方ですが、たとえ親子でも「金の切れ目が縁の切れ目」という事例を多数見てきました。個人的には、相続対策の必要のない方が何でもかんでも生前贈与をすることはおすすめいたしません

いずれにしてもこの「新型贈与」を適用するかどうかは非常に慎重に行って下さい。私には、納税者番号が導入できないので、いずれ富裕層の生前贈与による相続税圧縮を阻止したり、こっそり申告逃れをしようとしている財産をあぶり出す財務省の罠のような気がしちゃうんですよね。考えすぎでしょうかねえ。

どういうわけか、新聞・雑誌の記事やセミナーなどではやたら良い制度だって煽っているようですけど、住宅メーカーなどが広告主やスポンサーであるということをお忘れなく。(^^)




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